全国唯一の汽水域に関する総合的・学際的研究センターとして平成4年度に開設された汽水域研究センターは,本年度をもって10年間の設置時限が終了します.これに伴い,次年度からの概算事項として「新」汽水域研究センターへの改組・拡充を政府に要求しておりましたが,お陰様で財務省の来年度予算案に本件が盛り込まれることになりました.要求通りのいわゆる「満額回答」で,教授ポスト2,助教授ポスト3,客員III種(外国人)教官ポスト1が配置され,スタッフは一挙に現有の2倍になります.また,名称変更も無く,現在の汽水域研究センターのままで,この先10年間の時限付きで再スタートすることになります.


新センターではとくに次の2つにテーマを絞って,汽水域で起こる諸現象のメカニズム解明に取り組みます.そして,その成果をもとに,より的確な汽水環境の保全対策や汽水資源の有効利用についての提言を今まで以上に積極的におこなうことにしています.

@ 汽水域多様性解析研究分野;なぜ汽水域が豊かな生物相を生み出すことができたのか,また,人間の生産活動も含めた汽水域の生態系を健全に維持するにはどうしたらよいか,といったことを研究します.

A 汽水域環境変動解析研究分野;汽水域で起こる諸現象の複雑なメカニズム解明に取り組みます.また,過去から現在まで汽水域がたどってきた環境の変化を詳細に解明し,将来の環境変化予測に役立てます.

 この他,大規模な人工的改変から環境を修復し,汽水資源を地域産業に生かすためのプロジェクト研究や,貧酸素環境のもとでの有機質堆積物の形成メカニズムを明らかにし,生命進化や石油形成の舞台となった太古の地球環境を復元する,といった夢のある大型プロジェクトも他の研究機関と協力しながら進めていく予定です.

 中海・宍道湖という日本最大の汽水域をひかえた島根大学における汽水域研究は,基礎研究としても応用研究としてもこれまで以上に各方面から注目され,個性ある大学づくりの一環としてますます重要になってくるものと思われます.これからしばらく,新体制づくりに取り組むことになりますが,共同研究員・客員研究員および地域の皆様の一層のご支援とご協力をお願いする次第です.

(汽水域研究センター長・高安克己)