新年度・・・転勤・異動の季節です.

汽水域研究センターでも常勤のスタッフに入れ替えがありました.助教授の竹廣文明さんが4月1日付で広島大学大学院文学研究科に転勤になりました.かわって,新任助教授として堀之内正博さんが赴任しました.また,事務担当では森山和子さんの後任として福原千晴さんをむかえました.

新任スタッフ紹介 

  

  20024月に汽水域研究センターの助教授として赴任してきました.今まで私は主にアマモ場の魚類群集を対象に,神奈川県油壺や静岡県浜名湖において群集生態学的な見地から研究を行ってきました.アマモ場というのはヒルムシロ科などの海草類が形成する群落の呼称で,沿岸浅海域にしばしばみられるハビタットのひとつです.アマモ場には,アマモに付着する微小藻類や枯死したアマモに由来するデトライタスが豊富にあり,それらを餌とする無脊椎動物が高密度に生息しているため,魚類にとって好適な餌が豊富に存在しています.また,アマモの葉が形成する複雑な構造は,魚類に多様な生活空間を提供するだけでなく,体の小さな魚にとっては捕食者からのシェルターとしての役割を持つと考えられています.こういった特性のため,アマモ場には多様な魚類が生息し,その個体数も多く,また様々な種の稚幼魚の重要な生育場となっているといわれています.しかしアマモ場の魚類群集構造の形成機構についてはいままであまり明らかにされていませんでした.そこで私は東京大学大学院在籍中より,アマモ場の魚類群集がどのような構造をもち,その構造がどのような機構のもと形成されているのか明らかにし,また,アマモの葉が形成する複雑な構造がそこに棲む魚類の密度や分布パターン,死亡率などにどのような影響を与えるのか解明するために,潜水観察や野外実験によって研究を行ってきました.その結果,私が調査を行ったアマモ場では,種間における資源利用重複パターンなどから,魚類群集は平衡状態かそれに近い状態にあること,種によってアマモの密度や高さの違いに対する反応が異なることなどがわかりました.さらに,アマモ場のみならず,砂泥地や東南アジアのマングローブ域においても調査を行い,魚類群集についての知見を深めるよう努めてきました.私の研究は野外実験を含めたフィールド調査が主で,体力勝負といっても過言ではありませんので,常日頃から空手や筋トレなどで体を鍛えています(夜は肝臓も鍛えています).

今後は,従来の手法に加えて安定同位体比の解析等の手法も用い,中海や宍道湖の様々なハビタットにおける生物群集の構造や生産構造を明らかにし,それらが時間的にどのように変動していくのか,その変動はどのような要因で起こるのか,といったことなどを明らかにしていきたいと思っています.また,中海や宍道湖は人間の生活の場に近接しているため,人間活動の影響を大きく受けやすいと思われます.そこで,あるハビタットが人為的な攪乱を受けた場合,生息する生物群集にどのような影響があるのか,といったことを野外観察や実験などによって調べていきたいと思います.そしてそれらの結果を統合することによって中海や宍道湖の生態系の構造を把握し,さらに,地域の人間活動をも組み込んだ自然保護・環境保全のあり方についても考えていきたいと思っています.中海や宍道湖で調査をするのは初めてなので,まだ右も左もわかりません.先達の皆様のご指導ご鞭撻を宜しくお願いします.  hori@soc.shimane-u.ac.jp

 

 事務担当の福原千晴です.よろしくお願いします.  fukuhara@soc.shimane-u.ac.jp