新任スタッフ紹介

6月1日付けで島根大学の内部異動として総合理工学部から瀬戸浩二さんが助教授として着任しました.

 

 2002年6月に汽水域研究センターの助教授として赴任してきました.これまでは,主に地質学的・古生物学的・堆積学的・地球化学的手法を用いた古環境解析から汎世界的な海水準変動や水の循環システムについて行ってきました.具体的には,中新世(約1600万年前)の相対的海水準変動を底生有孔虫群集から解析したり,炭素・酸素同位体比を使って過去6500万年以降の古気候や古大循環を復元を試みたりしています.
 しかし,古環境を復元するためには,現在の環境やその変化についても解析する必要があります.そこで古環境解析を行うことを目的とした現在の環境の研究も行っています.特に汽水域は比較的小さな系で大きく複雑な変化が起こっています.これを詳細に調査することによって大きな系の古海洋の解析ができるのではないかと思って,汽水域の研究を始めました.汽水域での生態系と水塊構造に着目して研究を進めています.中海・宍道湖などの汽水域では,多くの方が研究しておられます.それらの研究に対して独自性を得るために,現場型の体力勝負の強引な方法で観測を行うことを心がけています.
 これからは,これまで行ってきたモニタリング観測をさらに充実させることによって,中海・宍道湖などの汽水域の水塊構造変動・塩分躍層下の底層水の循環システムを解明し,それに伴う一次生産者を含む生物生産性のモデリングを構築することを目的としたモニタリング調査を行いたいと思っています.しかし,これらのことは,水塊に記録されることはないので,それが記録されるであろう堆積物の調査を行い,水塊に含まれる有機物の堆積過程や循環システムの変化に伴う有孔虫などの有殻生物の群集変遷のメカニズムを明らかにしたいと考えています.これらのメカニズムを解明するためには,中・長期的な視点に基づいた固定型調査とともに定期的な現場型調査が必要です.また,それらによって絞り込まれたシステムを解明するために短期的な連続観測やモデル実験を行うことも重要であると考えています.現場型調査では,小型船舶を用い実際に水域に出て,船上からの調査やスキューバダイビングよるサンプリング調査を行い,多項目水質計を用いた基礎的な観測とともに懸濁物質の採取や底質の試料の採取など現場に行かないと得ることのできないマテリアルを用いて解析を行うつもりです.今はまだ初心者に近い私ですが,「誰よりも汽水域を知る人」を目指して頑張りたいと思います.これからもよろしくお願いします.


 

  特別講演会のお知らせ

 汽水域研究センターでは総合理工学部地球資源環境学教室と共催で次のような特別講演会を企画しました.汽水域研究センターと海洋科学技術センター・固体地球統合フロンティア研究システム(IFREE)が進めつつある共同研究「白亜紀海洋環境モデルとしての汽水湖の研究」とも関係する,地球と生命の最先端科学の話題です.ぜひ,ご来聴下さい.

未踏の地球深部への挑戦
−統合国際深海掘削計画−

平 朝彦
海洋科学技術センター
深海地球ドリリング計画(OD21)推進本部長

日時: 6月20日(木)16:20−17:50

会場: 島根大学総合理工学部3号館2F 多目的ホール

 


内容:2003年10月から始まる統合国際深海掘削計画では、我が国の運用する掘削研究船「ちきゅう」が未踏の地球深部へ挑戦を行う。当初、水深2500mから深度6000mの掘削に挑み、さらに水深4000mから7000mの掘削によってマントルへの到達を目指す。この計画では、海洋科学技術センターと大学等の研究・教育機関が連携し、地球生命科学の推進と幅広い科学技術分野の振興により、人類の未来に貢献するような成果の発信を目指す。