堀之内 正博

Masahiro Horinouchi, Ph.D

略歴

千葉県立木更津高校卒,東京大学農学部水産学科卒,東京大学大学院農学生命科学研究科水圏生物科学専攻(水産第一講座) 博士課程修了 博士(農学),東京大学農学部研究員および学振特別研究員(東京大学大学院農学生命科学研究科国際水産開発学研究室所属.東大在籍中は神奈川県油壺の東京大学大学院理学系研究科付属三崎臨海実験所,静岡県浜名湖の東京大学大学院農学生命科学研究科附属水産実験所油壺マリンパークなどの諸機関の方々にお世話になりながら主にアマモ場とその周囲のハビタットに生息する魚類の生態を研究していました)を経て,20024月より現職(島根大学汽水域研究センター准教授)

Research Interests

·         海草藻場(アマモ場など),マングローブ汽水域,ヨシ帯などに生息する魚類の生態
(Ecology of fishes in coastal habitats including seagrass habitats, mangrove areas, reedgrass beds and sand/mud substrata)

·         生息場所の変化・改変が魚類群集の構造に及ぼす影響
(Influences of changes in habitat characteristics on fish assemblage structures)

·         様々なハビタット間のかかわり.魚類は様々なハビタットをどのように利用しているか?
Interconnections of various habitat types –How do fishes utilize a variety of habitats?

·         海草藻場,マングローブ汽水域,ヨシ帯などに生息する魚類の保全生態
Conservation ecology of fishes in coastal habitats including seagrass beds, mangrove areas and reedgrass beds 

近年,世界中で海草藻場やマングローブ汽水域等,生物の生産性の高い沿岸域のハビタットが人為的攪乱などの原因により急速に衰退・消滅しつつあります.そこで,これらのハビタットの生物資源を持続的に利用したり良好な状態に回復させたりするために必要な水圏生物の生態や保全に関する基礎的・応用的な研究を行っています.
 対象生物は主に魚類で,被捕食者−捕食者相互作用や分布パターンの決定機構,群集構造の形成機構などを,潜水観察や野外・室内実験等の方法を用いながら研究しています.さらに,得られた情報をもとに造成ハビタットのデザインなどについても研究しています.
 現在,東京大学大学院農学生命科学研究科の水域保全学研究室国際水産開発学研究室理学系研究科付属三崎臨海実験所および農学生命科学研究科附属水産実験所西海区水産研究所石垣支所沖縄県石垣島Rajamangala University of Technology Srivijaya(タイ国シカオ市)東海大学沖縄地域研究センター(沖縄県西表島)長崎大学海洋資源動態科学講座茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター高知大学大学院総合人間自然科学研究科をはじめとする様々な機関の方々と共に,熱帯〜温帯域の海草藻場(アマモ場など),マングローブ汽水域,ヨシ帯などに生息する魚類の生態や保全のありかたなどについて研究を進めています.

List of Publications

 論文・プロシーディングス等

南條楠土・加納光樹・堀之内正博・佐野光彦(印刷中)西表島浦内川のマングローブ域における澪の魚類群集構造と環境特性.東海大学海洋研究所報告第31

Horinouchi M, Tongnunui P, Nanjo K, Nakamura Y, Sano M, Ogawa H (2009) Differences in fish assemblage structures between fragmented and continuous seagrass beds in Trang, southern Thailand. Fisheries Science 75:1409–1416

タイ国トラン県において,断片化した海草藻場と連続した海草藻場の魚類群集構造を調べたところ,種の多様性は前者で顕著に高く,また,どちらか片方の海草藻場のみに出現した種が存在することなどの違いがあることがわかった.これは,断片化海草藻場にはより多様なマイクロハビタットが存在することや,それらの相対量が海草藻場間で異なることなどに起因すると思われた.本調査域においては断片化海草藻場で魚類の種多様性がより高くなっていたとはいえ,人為的攪乱によるハビタットの断片化は容認すべきではないことは明らかである.

Nakamura Y, Horinouchi M, Sano M, Shibuno T (2009) The effects of distance from coral reefs on seagrass nursery use by 5 emperor fishes at the southern Ryukyu Islands, Japan. Fisheries Science 75:1401–1408
 フエフキダイ属のいくつかの種では稚魚と成魚はそれぞれ異なった場所(前者は海草藻場,後者はサンゴ域)に生息することが知られている.そこで,両生息場所の距離の違いがフエフキダイ属5種の稚魚の海草藻場利用パターンに与える影響を調べた.沖縄県石垣島と西表島の3海域において,サンゴ域に隣接する海草藻場とそうでない海草藻場でフエフキダイ属5種の稚魚の種数と個体数を比較したところ,少なくとも2海域で両海草藻場間に有意な違いは認められなかった.したがって,海草藻場とサンゴ域が数km以上離れていても,海草藻場はフエフキダイ属5種の成育場として有効であることがわかった.

横尾俊博・堀之内正博・荒西太士(2009)宍道湖および中海において春季に灯火トラップで採集された仔稚魚 Laguna16:4752

Horinouchi M, Mizuno N, Jo Y, Fujita, Sano M, Suzuki Y (2009) Seagrass habitat complexity does not always decrease foraging efficiencies of piscivorous fishes. Marine Ecology Progress Series 377:43–49
 海草の形成する複雑性が捕食者の摂餌効率に与える影響を室内実験によって調べた.周年定住種のアサヒアナハゼは待伏型/忍び寄り型の捕食戦略を用い,その摂餌効率は海草がない場合よりもある場合に顕著に高くなった.一方,来遊種のムツ幼魚は追いかけ型の捕食を行い,その摂餌効率は海草の密度が高いほど低くなった.ムツの存在下では被捕食者ニクハゼ稚魚はその攻撃を避けるため海草藻場内部を利用する場合があったが,ムツが存在しない場合にはアサヒアナハゼの存在の有無にかかわらず,海草藻場近傍のオープンな場所に出現することがほとんどであった.以上から,被捕食者にとって海草藻場内部は海草藻場内部に周年生息する捕食者による潜在的被捕食リスクを常に秘めた場所であり,そのため,それらに対する戦略を持たない魚は海草藻場外部を利用する可能性が示唆された.ただし,来遊してくる捕食者に捕らえられる前に海草藻場内部に逃げ込める安全圏内に分布するのであろう.このように被捕食者が捕食者のタイプの違いに応じて異なるハビタット利用パターンを示すことが,時に海草藻場の際のオープンな場所に小型の魚類が多数みられることの理由の一つであると考えられる.

Horinouchi M (2009) Horizontal gradient in fish assemblage structures in and around a seagrass habitat: some implications for seagrass habitat conservation. Ichthyological Research 56:109125
 海草藻場のエッヂとコアとで魚類群集の構造に違いがあるか,まだほとんどわかっていない.そこで,神奈川県油壺の海草藻場(アマモ場)とその周囲において,水平方向の位置により魚類群集構造がどのように異なるのか調べたところ,群集構造は,海草藻場の内部ではエッヂとコアの部分も含めて水平方向の位置による違いは無かったが,海草藻場内部と海草藻場の際のオープンな場所(ギャップ)および近傍の砂泥地との間では明確に異なっていた.優占種はその分布パターンにより4カテゴリーに分けられ,これらの分布パターンの組み合わせにより,群集構造にみられた水平方向の勾配が生じるものと思われた.さらに,本研究により得られた情報をもとに,海草藻場を保全する際にはどのようなことを考慮すべきなのか,考察を行った.

Horinouchi M, Kume G, Yamaguchi A, Toda K, Kurata K (2008) Food habits of small fishes in a common reed Phragmites australis belt in Lake Shinji, Shimane, Japan. Ichthyological Research 55:207217
 島根県宍道湖西岸のヨシ帯に生息する優占13魚種の餌利用パターンを精査したところ,6種で成長に伴う食性の変化がみられた.また,多くの種は広食性であった.本ヨシ帯の魚類は餌利用パターンにより5つのグループに分類された.このうち,浮遊性撓脚類,ヨコエビ亜目,アミ目を主に利用する3つのグループの構成種数が多く,これらがこのヨシ帯魚類群集にとって重要な餌であることがわかった.

Shibuno T, Nakamura Y, Horinouchi M, Sano M (2008) Habitat use patterns of fishes across the mangrove-seagrass-coral reef seascape at Ishigaki Island, southern Japan. Ichthyological Research 55:218237
 沖縄県石垣島のサンゴ域,砂礫底,海草藻場,砂地,マングローブ域において目視観察を行い,魚類の生息場所利用パターンを調べた.各生息場所に特徴的な魚種が存在し,群集構造は生息場所ごとに明確に異なっていた.多くの種は稚魚と成魚が同じ場所に出現していたが,成長に伴いマングローブ域や海草藻場からサンゴ域に生息場所を移行させた種も存在し,後者はマングローブ域や海草藻場を稚魚の成育場として利用すると考えられた.

Horinouchi M (2008) Patterns of food and microhabitat resource use by two benthic gobiid fishes. Environmental Biology of Fishes 82:187194
 静岡県浜名湖において砂泥地に生息するキララハゼ属2種の資源利用パターンを調べたところ,餌利用は大きく重複した一方で生息水深が微妙に異なっており,種間競争の存在が示唆された.しかし野外における除去実験で生息場所の拡大がみられなかったことから生息場所の違いは種間競争に起因しないことがわかった.室内における底質粒度選択実験により,底質に対する選好性の違いなどによって生息場所の違いが生じるものと思われた.

Nakamura Y, Horinouchi M, Shibuno T, Tanaka Y, Miyajima T, Koike, I, Kurokura H, Sano M (2008) Evidence of ontogenetic migration from mangroves to coral reefs by black tail snapper Lutjanus fulvus: a stable isotope approach. Marine Ecology Progress Series 355: 257–266
 沖縄県石垣島において,オキフエダイの筋肉組織の安定同位体比を調べたところ,サンゴ域で採集された大型個体の安定同位体比はマングローブ域で採集された稚魚とそれとは大きく異なっていた.しかしサンゴ域で採集された個体では,小型のものほど同位体比がマングローブ域の稚魚の値に近く,中には完全にオーバーラップするものもいたことから,本種は稚魚期にマングローブ域を成育場として利用していることが示唆された.

佐野光彦・中村洋平・渋野拓郎・堀之内正博2008)熱帯地方の海草藻場やマングローブ水域は多くの魚類の成育場か 日本水産学会誌.74:9396
 現在,世界の多くの研究者が用いている「成育場」の定義を紹介した.さらに,沖縄県石垣島で魚類の主要な生息場所の調査結果とカリブ海での報告例をもとに熱帯地方の海草藻場やマングローブ域の魚類の成育場としての機能を検討したところ,これらのハビタットが多くの魚類の成育場となっている場合とそうではない場合があることが判明した.後者の場合でも,地域全体の生物多様性を高めるためには,独自の群集構造を有するこれらのハビタットを保全することが重要であると考えられた.

Horinouchi M (2007) Review of the effects of within-patch scale structural complexity on seagrass fishes. Journal of Experimental Marine Biology and Ecology 350:111–129
 海草藻場のパッチ内スケールでの構造的複雑性が魚類の被捕食率や分布パターンにどのような影響を及ぼすのか等について,既存の研究例をもとにレビューを行った.すなわち,例えば,一般に信じられているHeckらのセントラルドグマが当てはまらない場合があること,そのような現象がなぜ起こるのか,等について詳しく解説した.

Shinnaka T, Sano M, Ikejima K, Tongnunui P, Horinouchi M, Kurokura H (2007) Effects of mangrove deforestation on a fish assemblage at Pak Phanang Bay, southern Thailand. Fisheries Science 73:862–870(平成19年度日本水産学会論文賞受賞)
 タイ国南部パックパナン湾において健全なマングローブが存在している場所とマングローブが伐採された場所とで魚類群集の構造を調べたところ,総種数総個体数共に前者で多くなっていることがわかった.また,底生甲殻類食魚は前者で多かったが,動物プランクトン食魚は後者で多く,さらに,種によっては体長組成に違いがみられたことから,マングローブ伐採は魚類群集の構造に大きな影響を及ぼすことが判明した.

Horinouchi M (2007) Distribution patterns of benthic juvenile gobies in and around seagrass habitats: effectiveness of seagrass shelter against predators. Estuarine, Coastal and Shelf Science 72:657664
 アマモ場およびその周囲の砂泥地において,スジハゼ(Acentrogobius sp.)着底稚魚の分布パターンがどのように決定されているか,野外観察や野外実験(ケージを用いた捕食者除去操作,稚魚の糸つなぎ,共生エビ巣穴量操作)等によって調べた.捕食者除去区とコントロール区とで稚魚の密度に差は無く,被食率もアマモ場と砂泥地との間で変わらなかったことから,この稚魚にとってアマモ場の捕食者に対するシェルターとしての意義は低く,捕食圧では稚魚の分布パターンを説明できないことがわかった.共生エビの巣穴の量を操作した実験では操作区間で稚魚の密度に違いが見られなかったことから,共生エビの巣穴の量も分布パターンを決定する要素ではないことがわかった.底質中の餌の量を調べたところ,稚魚の密度が低い場所では餌の量が顕著に少なくなっていたことから,本種稚魚の分布パターンには底質中の餌量が大きく効いている可能性が示唆された.

Nakamura Y, Horinouchi M, Shibuno T, Kawasaki H, Sano M (2006) A comparison of seagrass-fish assemblage structures in open oceanic and coastal bay areas in the Ryukyu Islands, Japan. Proceedings of the 10th International Coral Reef Symposium:446452
 外洋の影響が強い沖縄県竹富島東岸および西岸と陸域の影響が強い石垣島宮良湾および名蔵湾に存在する海草藻場において潜水観察を行い,魚類群集構造を比較したところ,種数・個体数とも海草藻場間で有意差は無く,群集構造は良く似ていることがわかった.すなわち琉球列島の海草藻場では少数の魚種が優占するため,外洋の影響が強い場所でも陸域の影響が強い場所でも群集構造があまり違わないことが判明した.

Horinouchi M (2005) A comparison of fish assemblages from seagrass beds and the adjacent bare substrata in Lake Hamana, central Japan. Laguna 12:6972
 静岡県浜名湖の2地点に存在する海草藻場とそれらに隣接する砂泥地に生息する魚類群集の構造を比較したところ,種数や個体密度には因子間で交互作用が認められ,クラスター分析でも魚類群集がまとまることはあまりなかったことから,これらの海草藻場魚類群集の構造は非常に可変的であることがわかった.このような現象は,これらの海草藻場では群集構造が主に新規個体の加入によって決定されることなどに起因すると考えられた.

堀之内正博,中村洋平,佐野光彦,澁野拓郎(2005)沖縄県石西礁湖における海草藻場保全地域選定に関する研究:どの海草藻場を保全すれば魚類の種多様性が維持できるか Laguna12:6367
 沖縄県石西礁湖内の主要な海草藻場の中からいくつか選んで保全しなければならない場合,どこを選べば海草藻場魚類を保全できるのか検証した.その結果すべての海草藻場を保全できない場合,次善の策として西表島東岸-小浜島西岸-小浜島東岸-竹富島西岸あるいは西表島東岸-小浜島西岸-小浜島東岸-竹富島西岸-竹富島東岸の組み合わせで海草藻場を保全すれば海草藻場魚類を保全し,種多様性を高く維持できることがわかった.

Horinouchi M, Nakamura Y, Sano M (2005)  Comparative analysis of visual censuses using different width strip-transects for a fish assemblage in a seagrass bed. Estuarine, Coastal and Shelf Science 65 (2005):5360
 近年,世界中で海草藻場が衰退・消滅の傾向にあるため,そこに生息する魚類の種構成や各種の密度を非破壊的に調べることが望ましい.そこで,本研究では海草藻場の魚類群集構造を潜水観察で評価する場合,トランセクトの幅によって得られる結果がどのように異なるか調べ,さらに船曳網とも比較した.種数には幅間で有意差はなかった.個体密度は0.5mおよび1m幅の間では違いが無かったが,幅を拡げると算定値が有意に低くなった.すなわち熟練観察者は左右0.5m範囲内(幅1m)の魚をほとんど見落とさず,船曳網では採集の難しい種も十分に評価しうることが判明した.

堀之内正博2005)アマモ場の構造は稚魚の個体密度や分布パターンにどのような影響をおよぼすか.海洋と生物 15927巻(4:350355
 アマモ場で行った野外実験をもとに,ハゼ科のチャガラ等の浮遊稚魚,スジハゼ着底稚魚が,アマモ場の構造の違いに対してどのような反応を示したのか紹介し,各種の稚魚にとってアマモ場がどのような役割を果たしているのか等について解説を行った.

Nakamura Y, Horinouchi M, Sano M (2004) Influence of seagrass leaf density and height on recruitment of the cardinalfish Cheilodipterus quinquelineatus in tropical seagrass beds: an experimental study using artificial seagrass units. La mer 41:192198
 琉球諸島西表島網取湾において人工海草を用いて作成した4タイプの人工海草藻場ユニットを設置し,海草の高さや密度が新規加入魚の出現にどのような影響を与えるのか調べたところ,優占種のヤライイシモチの出現密度は海草の高さと密度が高いユニットで有意に高くなっていることがわかった.これは,新規加入個体が水の流れが弱く,また,捕食者からのシェルターとなる微細生息場所を好むためだと思われた.

堀之内正博2003)アマモ場における調査法.竹内均編「地球環境調査計測事典 第3巻 沿岸域編」フジテクノシステム,東京.pp.723732.
 「第3巻沿岸域」中の第3章第6節「アマモ場における調査法」の執筆を担当.アマモ場の環境特性と魚類相を概説し,生息する魚類群集の様々な調査法について図表を交えながら詳しく解説した.さらに,アマモ場魚類群集構造の解析法の例を,神奈川県油壺で行った研究をもとに解説した.

Nakamura Y, Horinouchi M, Nakai T, Sano M (2003) Food habits of fishes in a seagrass bed on a fringing coral reef at Iriomote Island, southern Japan. Ichthyological Research 50:1522
 琉球諸島西表島のサンゴ礁に隣接した海草藻場に出現した魚類の餌利用パターンを精査したところ,各種は餌利用パターンの類似性から7群に分類され,種数では小型甲殻類を主 に利用するものが最も多いことが分かった.また本調査域の海草藻場は,温帯域の海草藻場に比べてデトリタス食,植物食,魚類食が相対的に多く,浮遊動物食が少ないのが特徴であった.

Tongnunui P, Ikejima K, Yamane T, Horinouchi M, Medej T, Sano M, Kurokura H, Taniuchi T (2002) Fish fauna of the Sikao Creek mangrove estuary, Trang, Thailand. Fisheries Science 68:1017
 タイ国トラン県シカオ水路のマングローブ域における魚類相を船曳網による採集等で調べた.種数はハゼ科が28種と最も多く,次いでヒイラギ科,カタクチイワシ科となっており個体数ではカタクチイワシ科やヒイラギ科など20種が多く,それらが採集個体数の88.5%を占めていた.また,本マングローブ域の魚類相は,優占種が共通なことなどからオーストラリア熱帯域マングローブ域の魚類相に類似していることがわかった.

Fish Team of the Trang Project (Prasert, P., Horinouchi, M.(5番目),6名.), 2002. Illustrated fish fauna of a mangrove estuary at Sikao, southwestern Thailand. Trang Project for Biodiversity and Ecological Significance of Mangrove Estuaries in Southeast Asia, Rajamangala Institute of Technology and the University of Tokyo. 60pp.
 タイ国シカオのマングローブ域において船曳網や投網,釣り等によって採集を行い,この地域に生息する魚類相を明らかにし,それらの目録(写真・解説)を作製した.

Horinouchi M, Sano M (2001) Effects of changes in seagrass shoot density and leaf height on the abundance of juveniles of Acentrogobius pflaumii in a Zostera marina bed. Ichthyological Research 48:179185
 アマモ場においてアマモの密度や高さがスジハゼ着底稚魚の密度に及ぼす影響を野外実験で調べた.着底稚魚はアマモ場内であればアマモの密度や高さの違いやアマモの有無に関係なく分布することがわかった.餌の量を調べたところ,実験区間では違いが見られなかったが,着底稚魚がほとんど出現しなかったアマモ場周囲の砂地では有意に少なくなっていた.従って本種着底稚魚の分布パターンは餌の密度を反映していると考えられた.

Horinouchi M, Sano M (2000) Food habits of fishes in a Zostera marina bed at Aburatsubo, central Japan. Ichthyological Research 47:163173
 油壺のアマモ場に出現した魚類各種の餌利用パターンを調べ,このアマモ場の魚類群集が どのような餌ギルドから構成されているのか明らかにした.その結果,種数では小型甲殻類と浮遊動物をそれぞれ主に利用していた2グループが多く,また優占種のほとんどがこれらに属していたため,本アマモ場の魚類群集は主に小型甲殻類食魚と浮遊動物食魚によって構成されていることがわかった.

Tongnunui P, Horinouchi M, Ikejima K, Sano M (2000) Stomach contents of the sillaginid fish, Sillago sihama in Sikao Bay, Trang province. Extended abstracts of the 26th Congress on Science and Technology of Thailand.
 タイ国トラン県シカオ近辺に出現したモトギスの食性を調べたところ,体長による違いが認められた.すなわち仔稚魚期の個体はコペポーダやヤムシ類を主に利用していた.しかし体長が大きくなるにつれて胃内容物中でそれらの餌項目が占める割合は減少していき,かわりに多毛類の割合が増大した.

Horinouchi M, Sano M (1999) Effects of changes in seagrass shoot density and leaf height on abundances and distribution patterns of juveniles of three gobiid fishes in a Zostera marina bed. Marine Ecology Progress Series 183:8794
 アマモ場においてアマモの密度と高さの違いがハゼ科浮遊稚魚の密度と分布パターンにどのような影響を及ぼすのか野外実験で調べ,浮遊稚魚がアマモの密度の低い場所等に多く出現することを明らかにし,なぜそのような場所を浮遊稚魚が好むのか考察した.浮遊稚魚は,大群を形成するなどの性質を持つため構造的には複雑でない場所を好み,逆にアマモの揺動による攪乱が大きい等の理由でアマモが密な場所を好まないと考えられた.

Horinouchi M, Sano M, Taniuchi T, Shimizu M (1999) Effects of changes in leaf height and shoot density on the abundance of two fishes, Rudarius ercodes and Acentrogobius pflaumii in a Zostera bed. Ichthyological Research 46:4956
 アマモ場においてアマモの密度と高さの違いがアミメハギとスジハゼの密度にどのような影響を及ぼすのか野外実験で調べた.アミメハギはアマモの密度や高さが高いほど多く出現したが,スジハゼはアマモの密度や高さの違いに影響されなかった.前者ではアマモの密度や高さが低いほど選好する微細生息場所などが少なくなるため出現個体数が少なくなるが,後者はアマモ場がシェルター等の機能を持たないためアマモの密度や高さに関わらず均一に分布するものと考えられた.

Horinouchi M, Sano M, Taniuchi T, Shimizu M (1998) Food and microhabitat resource use by Rudarius ercodes and Ditrema temmincki coexisting in a Zostera bed at Aburatsubo, central Japan. Fisheries Science 64:563568
 アマモ場におけるアミメハギとウミタナゴの餌及び微細生息場所の利用パターンを調べ,それらの重複パターンを明らかにし,さらにそれらを調査年度間で比較した.その結果,餌と生息場所の利用は一方の重複が大きいと他方の重複が小さくなるという変動パターンを示し,またウミタナゴの密度が低かった年ではアミメハギの生息場所が拡大した.したがって両種は資源分割によって種間競争を緩和し,共存している可能性が示唆された.

Horinouchi M, Sano M, Taniuchi T, Shimizu M (1996) Stomach contents of the tetraodontid fish, Takifugu pardalis, in Zostera beds at Aburatsubo, central Japan. Ichthyological Research 43:455458
 アマモ場に生息するヒガンフグの食性を調べたところ,小型の個体はヨコエビなど小型甲殻類を主に利用するが,成長するに従って貝類等の硬い餌項目を利用するようになることが明らかになった.このような体長による食性の違いは,摂餌器官の発達等に起因する可能性が示唆された.

報告書など

澁野拓郎,佐野光彦,大葉英雄,堀之内正博,木村匡,藤岡義三,高田宜武,阿部寧,橋本和正,中村洋平,下池和幸 (2005) F-5 サンゴ    礁生物多様性保全地域の選定に関する研究(1)保全すべき生物多様性の探索. 環境省地球環境研究総合推進費 平成15年度研究成果中間成果報告集W: 243261
 沖縄県八重山諸島の石垣島と西表島の間には石西礁湖と呼ばれる世界的に貴重な我が国最大規模のサンゴ礁地帯があるが,近年のオニヒトデ大発生やサンゴ白化現象などにより,サンゴ礁保全地域の選定を含む保全対策の実施が緊急の課題となっている.そこで,環境省地球環境研究総合推進費による,当該プロジェクトの一環として,サンゴ礁域に存在する海草藻場の保全がサンゴ礁生物多様性の維持にどのように貢献するのか検証した.海草藻場の魚類群集構造はサンゴ域でみられたものとは明瞭に異なり,海草藻場の優占種の多くはサンゴ域には出現せず,個体密度の低い種で海草藻場のみでみられたものも多かったことなどから,サンゴ礁保全地域選定にはサンゴ域とともに海草藻場も含めて考えることが必要不可欠であることがわかった.

澁野拓郎,佐野光彦,大葉英雄,堀之内正博,木村匡,藤岡義三,高田宜武,阿部寧,橋本和正,中村洋平,下池和幸 (2006)  F-5 サンゴ礁生物多様性保全地域の選定に関する研究(1)保全すべき生物多様性の探索. 環境省地球環境研究総合推進費 平成16年度研究成果中間成果報告集V: 213234
 当該プロジェクトの一環として,沖縄県石西礁湖内の海草藻場に生息する魚類をすべて保全し,多様性も高く維持するにはどのように海草藻場を組み合わせて保全すべきか検討した.主要な6つの海草藻場に出現した46種のうち30種は海草藻場特有の種であった.これらすべてを保全するには西表島東岸小浜島西岸小浜島東岸竹富島西岸の組み合わせか,これに竹富島東岸を加えた組み合わせで海草藻場を保全すればよいことが判明した.

澁野拓郎,佐野光彦,大葉英雄,堀之内正博,木村匡,藤岡義三,高田宜武,阿部寧,橋本和正,中村洋平,下池和幸 (2007) F-5 サンゴ礁生物多様性保全地域の選定に関する研究(1)保全すべき生物多様性の探索. 環境省地球環境研究総合推進費終了研究成果報告書 サンゴ礁生物多様性保全地域の選定に関する研究 平成15年度〜平成17年度: 948
 当該プロジェクトの一環として,(1)サンゴ礁の魚類の種多様性を高めるために海草藻場を保全する必要があるか?(2)海草藻場を保全する場合,近隣にサンゴ礁が存在したほうがよいか?(3)外洋の影響を強く受ける海草藻場と,陸域の影響を強く受ける海草藻場のどちらを保全したほうがよいか?(4)石西礁湖の海草藻場を保全する場合,実際にどの海草藻場を保全すればよいか? の4項目について行った調査結果をまとめた.

 

International Symposium

Horinouchi M, Mizuno N, Jo Y, Fujita, Sano M, Suzuki Y (2009) Foraging efficiencies of piscivorous fishes in relation to seagrass habitat complexity and microhabitat use patterns of prey fishes. 8th Indo-Pacific Fish Conference. 31 May5 June 2009, Fremantle, Western Australia, Australia.

Horinouchi M, Tongnunui P, Nanjo K, Nakamura Y, Sano M, Ogawa H (2009) Differences in fish assemblage structures between fragmented and continuous seagrass beds in Trang, southern Thailand. 1st International Conference on Seagrass Ecology and Dugong 2009. 24 December 2009, Sikao, Trang, Thailand.

Kurata K, Horinouchi M, Dettman D (2009) Stable isotope ratios of crustaceans in Lakes Shinji and Nakaumi. The Crustacean Society Summer Meeting in Tokyo, Japan & the 47th Annual Meeting of Carcinological Society of Japan. 20–24 September 2009, Tokyo University of Marine Science and Technology, Shinagawa, Tokyo.

Horinouchi M (2008) Horizontal gradient in fish assemblage structures in and around a seagrass habitat: some implications for seagrass habitat conservation. 5th World Fisheries Congress. 20–24 October 2008, Yokohama, Kanagawa, Japan.

Nakamura Y, Horinouchi M, Sano M, Shibuno T (2008) Effects of coral and seagrass habitat loss on spatial distribution patterns of coral reef fishes at the Ryukyu Islands, Japan. Commemoration of the 130th Anniversary of the National Museum of Nature and Science. International Symposium on Systematics and Diversity of Fishes. 34 March 2008, Uyeno, Tokyo, Japan.

堀之内正博2008 海草藻場における魚類の分布パターン.汽水域国際シンポジウム2007 汽水域の再生とその持続可能性(松江市)(2008112日)

戸田顕史・堀之内正博・布村昇・福田宏(2008)大橋川下流域湿地に棲息する保全すべき巻貝および等脚目.汽水域国際シンポジウム2007 汽水域の再生とその持続可能(松江)(2008112日)

Horinouchi M (2007) Effects of human-induced alteration in structural complexity created by seagrass on a fish assemblage structure in a seagrass bed. International Symposium on Restoration and Sustainability of Estuaries and Coastal Lagoons -Towards the Wise Use of Lakes Shinji and Nakaumi-, 2628 January 2008, Matsue, JapanShibuno T, Nakamura Y, Horinouchi M, Sano M (2005) Comparison of reef fish community structures from mangrove estuary to coral reef slope, at Ishigaki Island, southern Japan.  The 7th Indo-Pacific Fish Conference.1621 May 2005, Taipei, Taiwan.

Sakai S, Nakaya M, Kano A, Dettman D, Horinouchi M, Seto K (2005) Seasonal change of oxygen isotopes of water column and otolith in Shinji-Nakaumi lagoon. International Seminar on the Sustainability of the Precious Water Environment, 2930 January 2005, MatsueJapan

Horinouchi, M., Kume, G., and Yamaguchi, A. (2005) Food habits of fishes in a reed bed in Lake Shinji.  International Seminar on the Sustainability of the Precious Water Environment. 2930 January 2005, MatsueJapan

Nakamura Y, Horinouchi M, Kawasaki H, Shibuno T, Sano M (2004) A comparison of seagrass-fish assemblage structures in open oceanic and coastal bay areas in the Ryukyu Islands10th International Coral Reef Symposium. 28 June 2 July 2004, Okinawa.

Horinouchi M, Kume G, Yamaguchi A (2004) A comparison of fish assemblage structures associated with a reedgrass bed, a natural sand beach, an upright concrete wall and a restored sand beach with replanted reedgrasses. Interbational Seminar on Restoration of Damaged Lagoon Environments,1011 January, Matsue, Japan.

 

Collaborative and/or Overseas Survey

 

所属学会等

日本水産学会

日本魚類学会

Inter-Research Science Center

学会等での活動

Marine Ecology Progress Series編集委員

日本魚類学会編集委員


より詳しい情報は島根大学ホームページの研究者検索を参照して下さい。

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http://gakumuweb1.jn.shimane-u.ac.jp/kenkyu/kenkyu.html


Research Center for Coastal Lagoon Environments,
Shimane University,
1060 Nishikawatsucho, Matsue 690-8504,
Japan

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