島根大学公開講座
宍道湖・中海の賢明な利用を語る
(5回シリーズ)

講座の概要
 汽水域の賢明な利用を目指し、宍道湖・中海の生物・景観・水質・底質などの自然環境の現状について学ぶ。

期間:平成17年7月1日〜7月29日の毎週金曜日 計5回
時間:19:00〜21:00
対象:一般市民(高校生以上)50名
実施場所:島根大学松江キャンパス
講習料:2,500円

問い合わせ先

島根大学生涯学習教育研究センターまで

 


第1回 7月1日(金)

「宍道湖・中海の自然再生」
島根大学汽水域研究センター 教授 國井 秀伸

 宍道湖・中海の干拓淡水化事業が中止された今,斐伊川から境水道までの一連の水系では,失われた自然環境を取り戻すための自然再生が急務となっている。宍道湖・中海を再生するに当たっては,いつの時代のどのような湖の生態系に戻せばいいのか,その目標を設定する必要がある。今回は,宍道湖・中海における海草の過去(昭和30年代初期)から現在までの変遷や,出雲河川事務所が行っている両湖の環境整備事業の概要を紹介し,両湖の将来像について意見を交わしたい。


第2回 7月8日(金)

「魚類はヨシ帯や海草藻場をどのように利用しているのか」
島根大学汽水域研究センター 助教授 堀之内 正博

 中海・宍道湖の岸辺やその近くの浅い砂泥地には,ヨシや,海草類(コアマモなど)が形成する群落,すなわちヨシ帯や海草藻場が存在する。魚類はそれらの場所をどのように利用しているのか,言い換えれば,魚にとってヨシ帯や海草藻場はどのような意義を持っているのか,実際の研究例をまじえながら紹介していく。


第3回 7月15日(金)

「宍道湖の湖岸と浅い水域における底生動物の関係」
島根大学汽水域研究センター 助教授 倉田 健悟

 宍道湖を一周するとその岸の景観は多様性に富んでいることに気づく。しかしながらほとんどはコンクリートの傾斜の急な護岸であり,人々が近づいて水辺に親しめる場所は限られている。宍道湖の浅い部分はヤマトシジミの重要な生息場所であり,湖岸の整備にはそれらへの影響評価が欠かせない。また,湖全体の生態系に及ぼす影響を考えるには,河川から流入する無機物・有機物だけでなく,湖岸に生息する生物群集を通じた物質移動も検討する必要がある。このような背景から,まず宍道湖全体の湖岸の現況を把握し,様々な岸辺を分類・整理して集計することから研究を始めた。本講義ではそれらの結果と,引き続き行っている宍道湖の調査の概要を紹介する予定である。


第4回 7月22日(金)

「汽水域の水質特性」
島根大学総合理工学部物質科学科 助教授 清家 泰

 汽水湖である宍道湖・中海では,その水質は季節的にどのように変動するのか,あるいは経年的にはどのように推移してきたのかについて紹介する。また,淡水湖との相違点を明確にし,両湖が汽水域であるが故に避けられない“汽水域の水質特性”について紹介する。さらに,“望ましい水質”とはどういう水質なのかについて考える。


第5回 7月29日(金)

「海跡湖の底のお話 ―宍道湖・中海の底はどうなっているのか?―」
島根大学汽水域研究センター 助教授 瀬戸 浩二

 海跡湖は,その昔海であったものが湖となった所であり,平野にあるため,古くから人間の歴史にかかわってきた。中海・宍道湖はその代表的なものであるが,海跡湖は日本各地にも分布している。それらの湖沼の湖底環境は,いったいどのようになっているのだろうか?ヘドロが堆積するような湖?それとも生物に富んだ湖?それらの湖に加え,極限環境を示す南極の海跡湖,そして中海・宍道湖の湖底環境の現状を比較することによって,中海・宍道湖がどうあるべきかを考えていきたい。