自己紹介, Introduction

程木義邦 日本学術振興会特別研究員

Dr. Yoshikuni Hodoki

 4月1日より、日本学術振興会特別研究員として汽水域研究センターに所属することになりました程木義邦(ほどき よしくに)と申します。2000年に東京都立大学で学位を取得し、環境NGOの研究員、北大・地球環境科学研究院21世紀COE研究員を経て、現在に到りました。もともとの専門は、水界微生物群集の遷移や生産と光環境の関係で、大学院では近年の紫外線(UVB)の増加が藻類やバクテリアの生産に与える影響の研究を行って参りました。その一方で、環境NGOに勤務していた頃より、ダム・河口堰などの河川構築物、干潟・浅海域の埋立てや淡水化の環境問題についても、自然科学的な調査研究だけでなく、市民活動・交渉など様々なレベルで関わってきました。そのため、環境保全や自然保護の上で重要だと思った問題には、自分の専門、スケールの大小にこだわらず(こだわっていられない?)「環境科学」という枠組みの中、徒手空拳で様々な取り組みをしているというのが現状だと思います。
 汽水域研究センターでは、「河川連続体と不連続結合の概念に基づいた貯水池の環境影響評価」というテーマについて、斐伊川水系の貯水池、そして河川からの物質輸送先である中海・宍道湖を対象として研究する予定です。欧米では、長期的な観測結果に基づく影響評価を踏まえ、老朽化した河川構築物の撤去、運用改善による環境影響の軽減と自然再生が試みられるようになりました。また、日本でも河川環境の悪化や閉鎖性海域や内湾における沿岸漁業の不振から、市民・漁業従事者を中心として貯水池の運用改善や撤去を求める声が挙がりつつあります。しかし、全国で既に2,500基あまりの貯水池が作られているにもかかわらず、日本では影響を受ける環境要因や生物の抽出作業すら未だ不十分な段階であること、貯水規模の異なる欧米の貯水池で得られた研究結果や影響をそのまま日本のダムにあてはめることは出来ないとの指摘もあります。そのため、まずは貯水池の規模や水理条件毎に、環境要因・水質項目毎に貯水池が下流・沿岸海域に与える影響を現地観測結果に基づき整理する必要があると考えたのが、私の研究の出発点です。既存資料の収集・解析と共に現地観測も行う予定ですが、具体的なことはこれから斐伊川や中海・宍道湖を見ながら考えたいと思います。尾原ダムや志津見ダム、斐伊川放水路のことにも思いを馳せつつ・・・・・。「環境問題の解決や合意形成において、自然科学は問題の解決手法になりえるのか?」ということを真剣に考え、自分らしい研究を行いたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。