自己紹介, Introduction

香月 興太 博士(理学)

Dr. Kota Katsuki

 島根大学汽水域研究センターに8月10日付で非常勤研究員として赴任しました香月 興太(かつき こうた)です、よろしくお願いします。

 院生時代は九州大学に在籍し珪藻群集を研究対象として、現生における分布域と海底堆積物試料中に含まれる化石群集の組成を中心に研究を行ってきました。海洋における主要な一次生産者である珪藻群集は、珪酸質の殻を持つため堆積物中に保存されやすく、環境適応性も高い為、古環境復元の指標として高い信頼性をもっています。学生時代研究上の興味は、過去の海氷域や海流系の変遷とこれらの環境因子の変化が海洋環境全体にどのような影響を及ぼすか、ということにありましたので、現在もしくは過去に季節氷の影響下にあったと考えられる西部北太平洋亜寒帯域・ベーリング海・オホーツク海の柱状堆積物中の珪藻化石群集の解析に取り組みました。これまでの研究成果として、第四紀後期における海水準変動と表層水循環の関連や季節氷分布域の変遷を明らかにしたほか、季節氷が基礎生産力に及ぼす影響についても明らかにしました。また第四紀という現在と共通する珪藻群集が多い時代を取り扱うため、北太平洋やベーリング海における浮遊性粒子中の珪藻群集を解析し、珪藻群集の分布域や生態の解明にも努めました。院生時代には指導教官や共同研究者の方々の厚意により多くの研究航海や国際研究計画に参加させて頂いた為、上記の研究のほかにも、アラビア海アデン湾の堆積物試料や北極海の表層水試料を扱った研究を行っています。

 これまでは外洋域の研究を行っていた為、汽水域の重要性に着目したことはありませんでした。しかし近年注目されている地球温暖化や干拓事業等様々な規模の環境問題を考察する上で、汽水域の繊細な環境と高い堆積速度は、現在へと繋がる完新世後期の自然環境の変遷や人工改変の影響を解き明かす絶好の舞台であると思います。汽水域研究センターでは、湖水試料を用いた汽水域における植物プランクトン群集の鉛直分布や湖底堆積物試料中の珪藻化石群集から数十〜数百年単位の短周期気候変動の解明、人工改変と汽水域の環境の関連に取り組みたいと思っています。また、将来的には簡易型セディメント・トラップ等を利用し、「中海」における基礎生産力の時系列変動の研究も行なっていきたいと考えています。これからよろしくお願いします。