自己紹介, Introduction

中川昌人 博士, 非常勤研究員

Dr. Masato Nakagawa, Researcher

略歴
平成10年  京都大学理学部理学科 卒業
平成12年  京都大学大学院理学研究科生物科学専攻 修士課程 修了
平成18年  京都大学大学院理学研究科生物科学専攻 博士課程 修了(理学博士)
平成18年  総合地球環境学研究所 プロジェクト研究員 (〜平成21年)
平成21年  京都大学総合博物館 研修員 (〜平成24年9月)
平成24年10月(〜現在)島根大学汽水域研究センター 研究員

 2012年10月1日付けで非常勤研究員として着任しました中川昌人と申します。
 私の専門分野は植物集団生物学で、野生植物において種分化がどのような過程によって行われているか、植物種の多様性がどのようにもたらされたかを理解することを目的として、植物の生活の場・実態としての「集団」を対象として研究を行ってきました。
 大学院修士課程、博士課程では森林性草本植物を対象とした集団遺伝学的研究を行っていましたが、総合地球環境学研究所で参画した研究プロジェクト「亜熱帯島嶼における自然環境と人間社会システムの相互作用」での研究を契機に水中、水域を生活の場とする植物についての研究を中心に活動しています。このプロジェクトでは、研究対象地域である西表島の干潟や浅海にひろがる熱帯性海草藻場、そこに生育する海草類の調査・研究に取り組みました。日本国内では石垣・西表島にのみ分布する大型の海草ウミショウブの研究では、この種に特有な大潮干潮時の一斉開花のメカニズムを解明するため解剖学的解析を行いました。
 その結果、種子形成に必要な花粉や胚珠は同時に咲く花であっても同じ時期に作られるのではなく、個々の花は開花の準備が出来ても大潮で潮が引くのを待っていることが解りました。逆に言えば、大潮までの間、海草藻場の中には開花をまつ蕾が徐々に貯められてゆき、大潮の干潮をきっかけにそれらが一斉に咲く現象であると考えられました。また、種子には海流によって散布されるため種皮組織を特殊化させていることも解り、この植物がさまざまな面で成し遂げている海環境への適応の一端を明らかに出来たと考えています。その後、京都大学総合博物館に異動しましたが、海草類の研究を継続するとともに、琵琶湖のヨシ、ネジレモなどの水生植物の倍数性解析、遺伝構造の研究にも取り組んできました。
 水生植物は水中、水域で生活環を完結する、つまり、そこで生き抜き子孫を残すために陸上植物とは異なる様々な環境適応を行っています。私の研究の目標は、そのあり方を明確に捉え、植物がもつ「論理」を理解することです。汽水域研究センターでは、宍道湖・中海を中心とした斐伊川水系の水生植物についての研究を進め、発展させていければと思います。さらに宍道湖・中海の自然再生に向けた取り組みにも貢献してきたいと考えています。よろしくお願い致します。