自己紹介, Introduction

山田 桂 博士, 日本学術振興会特別研究員

Dr. Katsura Yamada, Post Doctorial Fellowship

 この度,日本学術振興会特別研究員として汽水域研究センターに赴任しました,山田 桂と申します.どうぞよろしくお願いいたします.

 私は愛知県出身で,学部・修士の6年間は愛知教育大学で過ごし,その後筑波大学で博士課程を修了しました.つくばでは連携大学院という制度を利用し,産業技術総合研究所(旧地質調査所)で研究をさせていただきました.松江に来る前は,21世紀COEプログラムのポストドクトラルフェローとして金沢大学に1年間在籍しました.金沢からの移動なので日本海側の町が続きますが,松江は初めての場所なのでとても楽しみです.

 私の専門は貝形虫という微少甲殻類で,貝形虫は2枚の合わさった殻(炭酸カルシウム)の中に軟体部を保持しています.殻は化石として地層から多産するため,この化石を使って昔の海のようすを調べてきました.卒業論文では長野県南部に位置する阿南町の地質を研究しました.修士課程では秋田県に分布する笹岡層(鮮新統)を対象にし,貝形虫化石の群集変化から古環境を復元しました.博士課程では,秋田地域に加え,新潟地域,能登半島と調査地域を増やし,氷期―間氷期が卓越し始めた時代(約2.7Ma)における日本海沿岸域の環境変化を,時間的空間的に明らかにしました.その結果,当時の日本海沿岸域が氾世界的な気候変動の影響を受けていたこと,当時の暖流は今よりもはるかに弱かったことなどが明らかになりました.この研究は今後も少しずつ地域を増やし,行う予定でいます.

 これまでは約300-200万年前というはるか昔の環境を貝形虫化石の群集変化から検討してきましたので,汽水域とはあまりつながりがありませんでした.こちらでは新しいことに挑戦する予定でいます.貝形虫は現在も生きており,中海や宍道湖だけでなく水たまりなどのあらゆる水域に生息しています.貝形虫殻の酸素同位体比や殻中に取り込まれるMg, Caなどの微量元素量は水温や塩分などと関係があることが指摘されています.このことを利用して中海・宍道湖の過去の水温や塩分の変動を定量的に見積もることができればと考えています.

 これまで化学分析はもちろん,汽水域にもほとんどなじみがありませんでしたので,みなさまから様々なご意見・ご指摘をいただければと思います.どうぞ3年間よろしくお願いいたします.