新センター長着任にあたってのご挨拶
2004年5月
汽水域研究センターは,宍道湖・中海というわが国最大の汽水域を眼前に有するという利点を活かし,1992年に島根大学に設立された学内共同利用の教育研究施設です.設立以来,徳岡隆夫初代センター長のもとで8年,次の高安克己前センター長のもとで4年が経ち,この4月から私,國井秀伸がセンター長を務めることとなりました.
センターの設立当時は,宍道湖・中海の干拓淡水化事業の是非について激しく意見が交わされていましたが,事業を巡る動きはこの12年の間にめまぐるしく変化して,2000年には干拓の中止が決定され,2002年には淡水化事業も中止となり,現在は劣化した両湖の生態系の修復・再生が急務となっています.島根大学自身もこの間に大きく変化したことはいうまでもありません.この4月からは国立大学法人島根大学となり,これまで以上に地域との連携や国際社会の中でのリーダーシップの発揮が求められるようになりました.
汽水域研究センターでは,新しい大学の体制の下,大学内外の研究者や研究機関と連携し,地域特性を活かした教育・研究を推進するための「地域創造研究推進機構」を設置すること,そしてこの機構を核とした学際的でユニークな大学院の設置を検討すること,アジアを中心とした国際ワークショップを開催し,汽水域に関する研究ネットワークを確立すること,あるいは中海分室を活用して,地域住民を対象としたオープンラボを実施すること,留学生を対象とした汽水域の環境調査およびアセスメントに関する教育コースを開講することなどなど,多くの中期計画中期目標を掲げています.これらのアクションプランがすべて実現されれば,宍道湖・中海はもとより,世界の汽水域の環境が改善されることは間違いありません.
大学内外の動きが一段落し,地元でも両湖の将来像について落ち着いて議論することができるようになった今は,両湖の短期的あるいは中長期的な調査・研究を協働して進めることのできる絶好の機会であるといえるでしょう.そのための核の役割を果たすことは,地元の大学にある汽水域研究センターの使命のひとつといえます.10年後あるいは50年後の両湖の姿はどうなっているのでしょうか.両湖の将来像は,あるいはそのままセンターの将来像を映しているのかも知れません.
汽水域研究センター センター長 國井秀伸