荒西教授が国際学会で最優秀ポスター賞受賞

汽水域研究センター環境変動解析分野の荒西太士教授とその指導学生が、8th Asia-Pacific Marine Biotechnology Conferenceにおいて、First Prize Poster Award(最優秀ポスター賞)を受賞されました。

本研究の対象であるシカメガキは、地球上で有明海にのみ分布するとされています が、第二次世界大戦後の環境悪化や沿岸開発などにより絶滅の危機に瀕していま す。そのような状況の下、本研究では最新の分子遺伝学的手法を駆使してシカメガ キの天然集団を有明海に南接する不知火海において初めて発見しました。シカメガ キは1950年前後に有明海から米国西海岸に移植された後、地蒔き式養殖により生産 が続けられ、米国では「Kumamoto oyster」として珍重されています。しかし、50年 以上に亘り近親交配を繰り返してきた結果、現在では遺伝的な近交弱勢に陥り、安 定的な養殖生産が困難になりつつあります。そのため、米国の水産業界は今回の新 発見に注目しており、天然シカメガキの移植による近交弱勢の解消と養殖業の再建 が期待されています。一方、日本でも近年のグルメブームで全国各地に拡大してい る"オイスターバー"では、米国から逆輸入される「Kumamoto oyster」が高値を付け ています。燃料費高騰や魚価低迷など水産不況が続く中、天然シカメガキを活用し た新たな養殖業の振興が、有明不知火海域各県でも大いに期待されています。

※Asia-Pacific Marine Biotechnology Conferenceは、Asia-Pacific Society of Marine Biotechnologyが主催する国際学会であり、太平洋沿岸やアジアの諸国で2年 に1回開催される。Asia-Pacific Society of Marine Biotechnologyは、European Society for Marine Biotechnologyとともに世界の2大海洋生物工学会連合であり、 両学会連合が共同して海洋生物工学のトップジャーナル「Marine Biotechnology」 を発行している。