自己紹介, Introduction

都筑 良明 工学博士, 非常勤研究員

Dr. Yoshiaki Tsuzuki, Researcher

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 12月10日付けで島根大学汽水域研究センターに、非常勤研究員として着任いたしました都筑良明(つづきよしあき)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 汽水域研究センターでは「宍道湖・中海の汚濁負荷に関わる集水域データベースの構築とGIS利用による汚濁負荷の特定」を研究テーマとすることになっています。具体的には、「@宍道湖におけるシジミの大量死と貧酸素水との関係に関する研究」、「A森林域の変遷に着目した大雨時の流出特性に関する研究」を中心に進めていければと考えています。年度内にどの程度進められるか、これまでの関連研究をレビューしながら検討していきたいと考えています。並行して、自分で行ってきた研究テーマについても継続していきたいと考えています。

 @については、宍道湖において発生しているシジミの大量死に関して、中海からの貧酸素水塊の遡上を含めて、主に国土交通省のデータを用いて検討を行うことを考えています。両者の関連を示すことを当面の研究目標とし、公開を前提としたデータベースについても検討する予定です。

 Aについては、12月初旬に国土交通省から洪水対策として中海と宍道湖を結ぶ大橋川の整備の提案が行われていることを背景として、次のような研究を行うことを考えています。森林域の流出特性について、従来も検討が行われていますが、森林域の状態が改善されているという指摘もあるので、森林域の変化も含めて検討し、洪水時の排水路の必要性等について検討を行う予定です。

 これまでの研究について多少長くなりますが説明させていただきます。

 卒業論文から博士論文の研究では、排水処理で用いられている活性汚泥法の嫌気好気式活性汚泥法を対象とした研究を行っておりました。当時はリン除去のメカニズムについては不明なところが多いものでした。リン除去のメカニズム解明には嫌気好気式活性汚泥法の活性汚泥内細菌の優占種による純粋培養が実現できれば有効であると考え、当時嫌気好気式活性汚泥法の優占種として有力とされていたAcinetobactorの純粋培養系による再現に関する検討を行った後、嫌気好気式活性汚泥法の純粋培養系による再現の可能性について検討しました。本研究において特に注目したのは、@活性汚泥法の通常の運転条件である上澄み流出式(Supernatant Withdraw Operation, SWO)、A純粋菌の通常の運転条件であるML流出式(ML Withdraw Operation, MWO)の2種類の運転(培養)条件についてであり、実験室内の装置を用い、運転条件がリン除去の程度と活性汚泥細菌相に及ぼす影響を調べることを目的とする実験的検討を行いました。
 活性汚泥法の運転を純粋菌の通常の運転条件であるML流出式で行った場合には、リン除去が悪化することが示されました。また、活性汚泥から単離した細菌による純粋培養、あるいはいくつかの細菌による混合培養によって嫌気好気式活性汚泥法の現象を再現する場合に、SWOとMWOの培養条件の違いは克服できる可能性があることも示唆されました。
 また、活性汚泥細菌相については、得られた細菌のデータに関してクラスター分析によるグループ分けを実施したところ、リン除去の良好な活性汚泥とリン除去の良好でない活性汚泥とを分類することができたことから、リン除去が悪化している場合には細菌相にも変化が現れている場合があることが分かりました。
 数年前から、海外の学術誌も含めて、活性汚泥細菌を平板培養したデータをまとめて発表することを試みておりましたが、最近の活性汚泥細菌についての生化学的分析手法の進歩もあり、なかなか登載には至りませんでした。その間にいただいた査読意見を元に内容を変更し、生態学的な側面からの検討を行い、論文として登載されるに至りました。現在も可能な範囲で検討を進めております。

 平成13(2001)度は、宇都宮大学大学院工学研究科エネルギー環境科学専攻において、温冷車トラックコンテナの高熱効率低公害化の研究開発に従事致しました。温冷車トラックコンテナは1台のトラックのコンテナを2つに区切り、一方を80℃前後の温蔵室、他方を5℃以下の冷蔵室とするもので、用途としては介護事業を含む弁当の宅配事業等があります。本研究ではペルチェ素子を用いて高効率低公害化を図ることを目的としました。平成13(2001)年度においては、プロトタイプを作成し、いくつかの問題点についての整理を行いました。

 平成14(2002)年度は、文教大学国際学部におきまして、地球環境論、国際環境計画論を担当しました。最近の国際的な環境問題を取り巻く状況等につきまして、自分自身でも新しい知見を取り入れながら、学生達に卒業後も生かせるような授業内容にするように心がけてきたつもりです。地球環境論では京都議定書の批准やヨハネスブルグサミットを主なテーマとして取り上げ、国際環境計画論では国際協力、環境問題を考えるための基礎として日本の戦後の復興から公害問題の発生の流れを概説した後、JICA、JBICを中心とする国際協力、NGOによる国際協力について概説し、PCM手法の演習を行いました。その際学生を対象に行ったアンケートの結果を元に、学生の「環境」についての意識等についてまとめるとともに、当時の学習指導要領との比較検討を行いました。

 地元の千葉県では県が中心となってNGO、市民が参加する三番瀬円卓会議が開催されていたこともあり、一般市民として傍聴しながら、三番瀬へ流入する河川の流域における水循環等について考えるとともに、今後の市民参加、市民の政策への参画のありかた等について考えてきました。東京湾・三番瀬海域に流入する汚濁負荷量は様々な政策の実施により、近年減少傾向にありますが、さらなる汚濁負荷の削減を実現するための可能性について、情報提供、環境教育的な側面を含めて検討し、生活排水の環境家計簿とその作成のベースとなる海域(水域)に流入する排水処理種類別の1人あたりの汚濁負荷量の考え方に至っています。現在の研究の中心と言える部分で、土木学会地球環境委員会途上国研究小委員会での研究活動の中で、これらの考え方を途上国を含めた海外の海域を対象に検討する試みも行っております。

 漁獲量による汚濁負荷削減量の定量化の試みも進めています。

 UNEPが中心になって進めている環境適正技術(EST)を日本のエコタウンの中で導入する研究プロジェクトがあり、その一部にも参加しました。