仙台(1992〜)

研究内容(詳細な説明)

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【塩性湿地に生息する腹足類の生態学的研究】
概要:宮城県七北田川河口に位置する汽水性の蒲生潟で腹足類の個体群動態や生活史に関する研究を行った。 期間:1992〜1999 共同研究者:菊池永祐、南浩史 資金:なし 成果発表:Ophelia, Jounal of Molluscan Study, MEPS, 生態学会シンポ 詳細:[河口域塩性湿地に生息する生活形の類似した生物種の共存に関する研究]近縁な複数種が同所的に生息する状況において、それらの生態的特徴を調べることは、共存機構と生態的特徴の進化の問題にとって有効な研究アプローチである。本州沿岸域の汽水性のヨシ湿地においては、巻貝のカワザンショウガイ類が優占して生息し、しばしば数種が同所的に見られる。塩性湿地の生態系はデトリタス食物連鎖が卓越し、堆積物食者のカワザンショウガイ類は重要な役割を担っていると予想されるが、同じ栄養段階の複数種の共存に注目した研究例は少ない。本研究ではまず、七北田川河口域のヨシ湿地で3種の密度分布の中心は相対地高によって互いに異なることを示した。さらに、カワザンショウガイとクリイロカワザンショウガイの2種の個体群について詳細な生活史の研究を行い、季節的な成長パターン、野外寿命、体サイズの性的二型等の生態的特徴の相違を明らかにし、その進化要因を考察した。また、利用可能と考えられる餌物質と巻貝の炭素と窒素の安定同位体比を測定し、2種は潮汐によって潮間帯上部に運ばれて沈殿する水中からの有機物を主に同化していることを示した。巻貝個体群の二次生産量と供給される沈殿有機物量の比較を行って十分な量の餌があることを示唆し、さらに加入量の著しい年変動によって両種とも密度が極端に高くならないことで共存が可能になっていることを推察した。

<成果物(審査付き学術論文)>

  • Stable isotope analysis of food sources for salt marsh snails 共著 2001年11月 Marine Ecology Progress Series 223: 167-177 塩性湿地に生息する2種のカワザンショウガイ科巻貝の利用している餌について、炭素と窒素の安定同位体比をトレーサーとした野外調査と実験を行った。その結果、2種のカワザンショウガイ科巻貝は水中からヨシ湿地に沈降して堆積する懸濁物を主に摂食し、植物プランクトンや珪藻などの微小藻類を同化していることが示唆された。 研究全体の遂行を担当した。 共著者:倉田健悟、南浩史、菊地永祐
  • Comparisons of life-history traits and sexual dimorphism between Assiminea japonica and Angustassiminea castanea (Gastropoda: Assimineidae) 共著 2000年5月 Journal of Molluscan Studies 66: 177-196 河口域塩性湿地に同所的に生息する2種のカワザンショウガイ科巻貝の野外個体群について、5年間余りにわたる雌雄別の詳細な成長解析を行い、その生活史と体サイズの性的二型を明らかにした。 研究全体の遂行を担当した。 共著者:倉田健悟、菊地永祐
  • Life cycle and production of Assiminea japonica v. Martens and Angustassiminea castanea (Westerlund) (Gastropoda: Assimineidae) at a reed marsh in Gamo lagoon, northern Japan 共著 1999年7月 Ophelia 50: 191-214 本州沿岸域の河口域塩性湿地に同所的に生息する2種のカワザンショウガイ科巻貝 (カワザンショウガイとクリイロカワザンショウガイ) を対象として、その生活環と生産量について2年間余りにわたる詳細な野外調査を行い、生態学的な差異を比較した。 研究全体の遂行を担当した。 共著者:倉田健悟、菊地永祐

<成果物(その他)>

  • 七北田川河口域の塩性湿地に生息するカワザンショウガイ科巻貝の生態に関する比較研究 単著 1999年3月 東北大学学位論文 66p. 宮城県七北田川河口域の塩性湿地においてカワザンショウガイ科巻貝の分布、生活史、利用している餌、等を調べた。生活型の類似した2種のカワザンショウガイ科巻貝は分布や生活史形質がいくつかの点で異なるものの、両種とも水中から運ばれる沈殿物を主に摂食していることが分かった。沈殿物量と二次生産量の値から、両種の個体群には十分な餌が供給されており、餌をめぐる消費型競争は生じず、共存が可能になっていると考えられた。